大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 平成8年(行ウ)27号 判決 1999年6月11日

名古屋市東区葵二丁目三番六号

原告

株式会社シーエスコーポレーション

右代表者代表取締役

山田昭昌

右訴訟代理人弁護士

尾関闘士雄

名古屋市東区主税町四丁目一八番地

被告

名古屋東税務署長 木田重利

右指定代理人

渡邉元尋

小林孝生

片桐教夫

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が平成四年六月二九日付けでした原告の平成元年四月一日から同二年三月三一日までの事業年度の法人税の更正処分のうち所得金額二億一三〇〇万九〇〇〇円、課税土地譲渡利益金額二億一六六七万五〇〇〇円及び納付すべき税額一億四四八七万〇六〇〇円を超える部分並びに重加算税賦課決定処分を取消す。

第二事案の概要

一  争いのない事実等

1  原告

原告は、昭和四八年五月一日に設立された会社であるが、昭和五九年一二月二日、商法四〇六条の三第一項に基づき解散されたものとみなされ、その旨の登記がされていたところ、昭和六〇年四月一一日、会社継続の登記を経て、山田昭昌(以下「山田」という。)が原告の株式を取得し、同人が会社の代表取締役となって、不動産取引を始めた。

原告は、昭和六三年に名古屋市中村区名駅三丁目一六番六号の休眠会社五洋物産株式会社を合併した後、資本金を二〇〇〇万円とし、さらに、平成二年八月二一日、商号を株式会社互友商事から株式会社シーエスコーポレーションに変更した。

原告は、主に名古屋市内の不動産の売買、仲介を業としている会社であり、平成三年六月二四日に原田俊夫が代表取締役となるまで山田が原告の代表取締役であった(弁論の全趣旨)。

2  課税の経緯

(一) 原告は、平成二年六月一日、当時の本店所在地である名古屋市中村区名駅三丁目一六番六号を所轄する名古屋中村税務署長に対し、平成元年四月一日から同二年三月三一日までの事業年度(以下「本件事業年度」という。)分の法人税として、所得金額九九八三万四八五九円、課税土地譲渡利益金額二億一六六七万五〇〇〇円、納付すべき税額九九六〇万〇六〇〇円とする確定申告をした(乙三一)。

(二) 被告は、平成四年六月二九日、原告の本件事業年度の法人税につき、所得金額七億〇七七三万九〇一一円(申告額に別表一記載のとおり加算、減算した金額である。)、課税土地譲渡利益金額八億四八四五万二〇〇〇円、納付すべき税額五億三二二九万五七〇〇円とする更正決定(以下「本件更正決定」という。)並びに無申告加算税五四四万二〇〇〇円及び重加算税一億七一八四万円とする賦課決定処分(以下、「本件賦課決定」といい、重加算税についての賦課決定を「本件重加算税決定」という。)をした(甲四、五)。

(三) 原告は、被告に対し、平成四年七月二〇日、本件更正決定及び本件賦課決定に対する異議申立てをしたが(甲六)、被告は、平成四年一〇月二三日付けで、異議申立てをいずれも棄却する旨の決定をした。

そこで、原告は、国税不服審判所長に対し、平成四年一一月二四日、右異議決定に対する審査請求をしたが(甲七)、国税不服審判所長は、平成八年六月六日付けで、右審査請求をいずれも棄却する旨の裁決をした。

二  本件訴訟における被告の主張と原告の認否

1  被告は、本件事業年度の原告の所得金額は、別表二のとおり七億六九七六万二九六四円、課税土地譲渡利益金額は、別表三のとおり八億一二二六万一〇五四円で、その税額は二億四三六七万八三〇〇円、差引合計法人税額は五億四六二四万七六〇〇円になるから、本件更正決定は適法であり、本件重加算税決定も適法であると主張する。

2  被告の主張する原告の所得金額のうち、原告の申告額及びこれに別表二の番号2ないし5を加算し、番号7を減算すべきことについては、当事者間に争いがない。

3  課税土地譲渡利益金額について、被告は、別表三のとおりであると主張している。同表の番号6、7、14、15については、確定申告のとおりであり、番号1ないし5、8ないし10、13については、原告がした確定申告には、税額の計算に次の(一)ないし(四)の誤りがあり、正しくは別表三の該当欄記載の額であると主張しているものであるところ、原告は(一)ないし(三)については明らかにこれを争わないので自白したものとみなし、(四)については証拠(乙三〇)によりこれを認めることができる。

(一) 租税特別措置法六三条の二(ただし、平成二年法律第一三号による改正前のもの)の課税対象は土地の譲渡利益であって、土地と共に建物を譲渡する場合の建物の譲渡利益は含まないのに、別表の番号1、4、5、8、9、10、13について建物区分所有権の譲渡に係る利益を除外していない。

(二) 原告の確定申告書に添付の別表三(二の二)の「譲渡した土地等の帳簿価額の累計額の計算」の「当期の保有期間の月数」欄において、月数の計算は暦に従って計算し、一月に満たない端数を生じたときはこれを一月とすることとされている(租税特別措置法施行令三八条の五第四項で準用する同法施行令三八条の四第七項)ところ、別表三の番号8の物件は、平成元年九月二九日に取得し、同年一〇月六日に譲渡しているから、当期の保有期間の月数は一月であるところ、二月として申告し、番号10の物件は、平成元年五月二五日に取得し、同年一〇月一一日に譲渡しているから、当期の保有期間の月数は五月であるところ、六月として申告し、いずれも一月過大に計算している。

(三) 別表三の番号2の土地の譲渡利益金額の計算において、確定申告書に添付の別表三(二の二)の「譲渡した土地等の帳簿価額の累計額の計算」欄の区分「24」の「<4>」欄の金額を三二〇八万三三三三円としているが、「<4>」の欄は、「<2>×<3>」で求められるところ、<2>は三億五〇〇〇万円で、<3>は一二分の一一であるから、計算すると、<4>は、三億二〇八三万三三三三円になる。

(四) 原告は、別表三の番号3の土地の譲渡直前の帳簿価額を七八七七万五七〇〇円として記載しているが、同土地は、平成元年三月三一日に、中宇淳一から七四八〇万円で仕入れたものであり、右帳簿価額のうち合計三九七万五七〇〇円は、同土地の譲渡に係る仲介業者三者への手数料の合計額であり、同土地の譲渡「収益に係る原価の額」とは認められない。よって、原告の確定申告書に添付の別表三(二の二)の同土地の「同上に対応する原価の額7」欄の金額は、七八七七万五七〇〇円ではなく、七四八〇万円となる。

4  よって、本件更正決定のうちで争いがあるのは、所得金額のうち別表二の番号1と6、課税土地譲渡利益金額のうち別表三の番号11と12、すなわち、別紙物件目録記載の各土地(以下、同目録記載一ないし三の土地を「本件甲土地」、同目録記載四、五の土地を「本件乙土地」といい、同目録記載一ないし五の土地をまとめて「本件各土地」という。)の売上げによる所得及び利益金に関してである。

平成元年九月二五日付けで、原告が、本件甲土地を株式会社コイデ・アンド・カンパニー(以下「コイデ・アンド・カンパニー」という。)に対し、代金四億九〇一四万円で譲渡する旨の契約書(乙四。以下この売買を「本件甲売買」という。)、同日付けで、株式会社ハッコー住宅販売(以下「ハッコー住宅」という。)が、本件乙土地をコイデ・アンド・カンパニーに対し代金四億八二七六万円で譲渡する旨の契約書(乙六。以下この売買を「本件乙売買」という。)があり、平成元年一〇月四日付けで、コイデ・アンド・カンパニーが有限会社マハラジャ岐阜(以下「マハラジャ岐阜」という。)に対し、本件各土地を代金一六億二一五〇万円で譲渡する旨の契約書(乙二。以下「本件売買」という。)がある。

原告は、本件甲売買を前提として、益金・損金を計算し、所得金額、課税土地譲渡利益金額、税額を算出すべきであると主張した。

被告は、本件売買の実質的な売主は原告であり、本件売買の代金は原告に帰属したとして、益金・損金を計算し、所得金額、課税土地譲渡利益金額、税額を算出すべきであると主張した。

三  争点及び争点に対する当事者の主張

1  本件売買の実質的売主は原告であり、本件売買の代金は原告に帰属するといえるか。

(被告の主張)

本件売買の実質的売主は原告であり、本件売買の代金は原告に帰属する。

(一) 原告は、本件各土地を取得し転売することを企図して、本件各土地の所有者及び同所に居住する者と交渉をし、本件甲土地については昭和六三年八月二五日に原告が、本件乙土地については同日及び平成元年八月八日にハッコー住宅がその所有権を取得した。本件各土地を原告とハッコー住宅がそれぞれ取得することになったのは、原告一社すべて取得すれば国土利用計画法(以下「国土法」という。)で定める届出をする必要があるが、それぞれ別に取得すれば同法で定める届出をする必要がなかったからである。

(二) 山田は、平成元年夏ころ、当時衆議院議員であった近藤豊(以下「近藤」という。)の後援会婦人部長であった田口つた子(以下「田口」という。)から、近藤の知人である小出功(以下「小出」という。)が事業で失敗して困っているからなんとかしてほしい旨の依頼を受けた。

(三) 山田は、当時、原告が販売を予定していた本件土地の売却により多額の利益が生ずると予想されていたことから、コイデ・アンド・カンパニーをダミーの売買当事者として利用し、同社に多額の利益が生じるように仕組んで原告の利益を圧縮した。

その方法は、次のようなものであった。

原告は、本件甲土地について、コイデ・アンド・カンパニーとの間の平成元年九月二五日付け土地売買契約書を作成し、同年一〇月二三日、四億九〇一四万円で売却したことにし、本件乙土地についても、本件甲土地と同日である同年九月二五日付けで、ハッコー住宅とコイデ・アンド・カンパニーとの間の土地売買契約書を作成し、同年一〇月二三日、四億八二七六万円で売却したことにした。

さらに、原告は、コイデ・アンド・カンパニーをして、同社が同年一〇月四日、本件甲土地及び本件乙土地を併せて、これをマハラジャ岐阜に一六億八七〇万円で売却する旨の土地売買契約書を作成させ、同年一〇月三一日、その履行として売買代金の受渡しとともに土地の引渡しが行われた。

そして、本件売買の代金は、手付金も残金も原告が最終的に取得している。

この取引は、不動産売買契約書に記載されたコイデ・アンド・カンパニーが単に名義上の取引主体となっているだけで、原告が真実の取引主体である。原告は、本件各土地をマハラジャ岐阜に譲渡するに当たり、コイデ・アンド・カンパニーを介在させることによって、本件各土地の譲渡による利益を除外したのである。

(原告の主張)

本件売買の売主はコイデ・アンド・カンパニーであり、本件売買の代金が原告に帰属することはない。

(一) 売買の経緯

(1) 原告及びハッコー住宅は、転売して利益を得る目的で、大野忠男らから本件各土地を買い取ったが、買収資金や借地人らに対する立退料に要した資金もすべて地銀生保住宅ローン株式会社(以下「地銀生保」という。)から借り受けたものであり、なるべく早く転売したいと考え、買手を物色していた。

株式会社八伸(以下「八伸」という。)から買手として平野恵三の話があったが、同人は若年であり信用力が乏しく、契約期日も明示して来ない状況であったので、原告らは、右平野恵三の買受申出は実現不可能と判断し、他に売却することを決意した。

そこで、山田は、以前に、転売により利益が予想される土地を売却したことがある近藤に、本件各土地を一坪当たり金六〇〇万円で売りたいと言って、買手を捜してくれるよう申し出た。近藤から、田口を通じて、東京在住の小出が買主として紹介された。

(2) 原告は、平成元年九月二五日、コイデ・アンド・カンパニーとの間で、本件甲土地を代金四億九〇一四万円(坪当たり六〇〇万円)、ハッコー住宅は、コイデ・アンド・カンパニーとの間で、本件乙土地を代金四億八二七六万円で各々売買契約を締結し、同日、手付金として原告は金四九〇〇万円、ハッコー住宅は金四八〇〇万円を受領した。いずれも残代金の支払並びに所有権移転登記は同年一〇月末日と約定した。両土地売買契約には買手側の仲介業者として伊藤忠ハウジング名古屋支店が立会をした。

(3) 原告及びハッコー住宅は、コイデ・アンド・カンパニーと売買契約をして間もなく、八伸から、平野恵三が代表者であるマハラジャ岐阜が、銀行からの融資を受けられることになり、買い受けたいとの話が、持ち込まれた。

しかし、原告らは、既に、コイデ・アンド・カンパニーに売却済であることを告げた。ところが、八伸は、本件各土地を原告らに仲介し、占有者の立ち退きにも尽力したのに、同人に連絡なくコイデ・アンド・カンパニーに売却したことを強く怒り、原告らを非難した。そこで、原告は止むなく、八伸に対し、小出に連絡することを約した。

原告は小出に対し、マハラジャ岐阜が買受けを希望している旨を伝えた。

(4) マハラジャ岐阜は、伊藤忠ハウジング渋谷店と八伸の仲介にて、平成元年一〇月四日、本件各土地を代金一六億二一五〇万円で買い受ける契約をし、その売買契約は実行された。

(二) 評価

(1) 原告は、本件売買には全く関与しておらず、従って、コイデ・アンド・カンパニーが得た買値と売値の差額である一坪当たり金四〇〇万円の利益について一円の取得もなかったものである。

原告は、平成元年一〇月三一日のコイデ・アンド・カンパニーとマハラジャ岐阜の残金決済の場に立会っておらず、代金は全て小出が受領した。

(2) 原告も本件各土地の購入資金を他から借りており、早く本件各土地を売却せねばならない事情もあり、有力な政治家の紹介でもあり、紹介者の近藤及びコイデ・アンド・カンパニーに相当な利益が出るとしても、原告及びハッコー住宅も、コイデ・アンド・カンパニーに売却することにより十分な利益を得ることになるものである。当時は、いわゆる土地ブームの最中であり、契約が成立して残金決済の日までに転々と何人も先に転売される事例が多数存在したものである。右の事情の下で、原告及びハッコー住宅のした本件各土地取引には何らの不自然も、不可解も存在しない。

(3) 原告は、本件甲土地につき、大野忠男らからの買値と、コイデ・アンド・カンパニーに売却した売値(一坪当たり金六〇〇万円)との差額を、原告の所得として法人税申告をなしたものである。

(4) 本件乙土地は、ハッコー住宅が前所有者から買い取り、コイデ・アンド・カンパニーに売却したものであり、右売却による利益を、自社の所得として法人税申告をしている。本件乙土地をハッコー住宅が原告に売買した事実を証する証拠は一切存在しない。

(5) 地銀生保名古屋支店は、平成元年一〇月ころ、株式会社十六銀行(以下「十六銀行」という。)柳ケ瀬支店営業担当者からマハラジャ岐阜を紹介されたが、マハラジャ岐阜の代表者である平野恵三は年も若く資産も収入も少なかったことから、貸付を渋った。地銀生保は、平野恵三の祖母で資産を多く有し、ホテルを経営する平野千代子の保証を条件としたが、同千代子は同貸付の保証となることは容易に承諾しなかった。地銀生保における貸出決済(金一七億円)は同月二〇日であり、地銀生保の融資の決定は九月末日までにはなかった。以上のとおり、購入代金の地銀生保からの融資は難航し、同年一〇月三一日に平野恵三が平野千代子名義の保証書を作成するという文書偽造によって、ようやく融資が実行されたものである。

(6) 原告に対し、脱税による刑事訴追がなされなかった。

(三) 被告の主張に対する反論

(1) コイデ・アンド・カンパニーの資力について

コイデ・アンド・カンパニーが不渡手形を出し、平成元年九月および一〇月ころ倒産状態にあったことについて、山田は全く知らないところであった。本件各土地をコイデ・アンド・カンパニーに売る話は、前記のとおり、近藤の紹介によるものであり全て信頼していた。

土地売買においては、要は代金支払ができるかであり、資金調達能力が重要であるのであって、買手の経営内容は重要ではない。

なお、本件各土地取引の仲介業者である伊藤忠ハウジング流通営業二部渋谷店において、コイデ・アンド・カンパニーの入居ビルの状況等を見聞し、相当高額の家賃を要するビルを使用していることを確認し、その旨同社名古屋支店にも報告していたものである。

(2) マハラジャ岐阜が買主に決まった時期

平成元年九月一三日にマハラジャ岐阜が本件各土地の購入代金の融資のため書類を十六銀行支店に送付したことは、重要ではない。重要なことは十六銀行がマハラジャ岐阜の一八億円の融資申込みに対し、手付金の一億六〇〇〇万円を融資したのみで、残高の融資を断っていることである。マハラジャ岐阜は、十六銀行に購入資金の融資を断られたので、平成元年一〇月、本件各土地の購入代金を地銀生保名古屋支店に融資を申し込み、同月三一日に地銀生保から一八億円の融資を受けている。よって、九月一三日に原告がマハラジャ岐阜に売り渡すことが実質的に確定してはいない。

(3) 八伸が買主側の仲介料の外、売主側のコイデ・アンド・カンパニーの仲介料の枠の中から別に仲介料を受け取ったことは、売主側の仲介者伊藤忠ハウジングが譲渡したものであり、山田が支払ったものではない。

(4) 原告がフジセールス株式会社(以下「フジセールス」と言う。)及び有限会社航洋産業(以下「航洋産業」という。)に金五〇〇万円を支払ったことは本件争点に関係がない。

(5) 鈴木四郎(以下「鈴木」という。)は、本件各土地の二度に亘る土地取引の直接の関与者ではなく、伊藤忠ハウジングの東京側から形式的に立ち入ったのみであり、深く事実を知り得たものではない。

(6) 被告の主張を裏付けるものは乙一(小出の質問てん末書)以外には存在しないところ、コイデ・アンド・カンパニーは、本件各土地のマハラジャ岐阜への売渡しにより多大の利益を得たにも拘らず、この所得を税務申告せず、不正に税金を免れたものであり、税務調査が開始されると、転売利益は原告が取得したとする虚構の供述をして、自己の脱税行為を隠ぺいしようとしたものである。小出は乙一作成後、国外に逃亡して現在に至っており、その行方は不明である。

2  本件重加算税決定について、原告に隠ぺい・仮装が認められるか。

(被告の主張)

原告は、本件事業年度の法人税の確定申告に際し、次の各行為を行い、これに基づき所得金額等を過少に記載した法人税の期限後申告書を提出した。

(一) マハラジャ岐阜に対する本件各土地の譲渡について

原告は、本件各土地を自らマハラジャ岐阜に譲渡したにもかかわらず、その一部しか計上せず、あたかもコイデ・アンド・カンパンニーが売買の当事者であるかのように仮装して売上げを除外して申告した。

(二) 仕入れの二重計上について

原告は、名古屋市東区葵二丁目三〇五番地の土地の仕入金額のうち手付金一億二〇〇〇万円を二重に計上して、それが誤りであり所得を過少に申告することとなることを知りながらあえて仕入れとしたまま確定申告をした。

(三) 架空雑損失について

原告は、息子が代表者を務める訴外有限会社キャプテン観光(以下「キャプテン観光」という。)が株式会社シンコーホーム(以下「シンコーホーム」という。)に対して負担することとなった三三〇〇万円を、これに代わって支払ったが、自らの雑損失として損金の額に計上するため、取引自体が全く行われていない名古屋市中村区太閤通三丁目二八番一一の土地についてシンコーホームと売買契約を締結したとして契約書を作成し、右契約を解除したため契約の際に支払った手付金三三〇〇万円を放棄することとなったかのように仮装し、これに基づいて確定申告した。

右各行為は、国税通則法六八条二項にいう「国税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部及び一部を隠ぺいし、または仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。そこで被告は、同条項に基づき重加算税を賦課したものである。

右に述べたとおり、原告の差引合計法人税額は、五億四六二四万七六〇〇円となり、原告の申告に係る同税額九九六〇万六〇〇円との差額四億四六六四万七〇〇〇円は、すべて右重加算税を賦課すべき場合に該当する。右差額について、これに係る重加算税の額を計算すると、増加した税額四億四六六四万七〇〇〇円の一万円未満の端数を切り捨てた金額(国税通則法一一八条三項)に四〇パーセントを乗じて計算した一億七八六五万六〇〇〇円となる。

したがって、被告が行った本件重加算税決定は、右金額の範囲内でなされており適法である。

(原告の主張)

(一)については、1の(原告の主張)のとおりであり、また、原告に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の隠ぺい・仮装はない。

第三当裁判所の判断

一  本件売買の実質的売主は原告であり、本件売買の代金は原告に帰属するといえるか(争点1)。

1  証拠(証人田邊八郎、同田口つた子、同鈴木四郎、同山内朗、同中川信樹、原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認めることができる。

(一) 本件各土地の取得

(1) 別紙物件目録記載一ないし四の土地について、昭和六三年ころ、本多商興株式会社がいわゆる地上げを進めていたが、八伸がこれに代わり、地上げを進めていた。八伸の代表取締役である田邊八郎は、山田に対し、転売によって利益を得ることができる物件であるとして購入を勧めた。

(2) そこで、山田は、右土地を取得し転売することを企図して、小林弘明(以下「小林」という。有限会社中央ホーム(以下「中央ホーム」という。)の専務取締役である。なお、同人は、原告の関連会社である株式会社シーエス不動産販売の代表取締役でもある。乙六〇)をして、所有者との購入交渉に当たらせた。

(3) その結果、原告は、昭和六三年八月二五日、物件目録記載一の土地を大日向佳子から七五〇〇万円で、同目録記載二の土地を大野忠男から一億一一七六万円で、同目録記載三の土地を大野僥子から七五〇〇万円で、買い受ける契約を締結し、各代金を支払って、所有権移転登記を受けた(乙三四の三、三五の二、三六の二、五五)。

(4) 同目録記載四の土地については、同日、ハッコー住宅が加藤八重子から六五〇〇万円で買い受け、代金を支払い、所有権移転登記を受けた(乙三七の二、五五)。右土地の買受人がハッコー住宅となったのは、原告一社あるいは関係法人ですべて取得すれば国土法で定める届出をする必要があるが、売主の事情で右届出申請が拒絶されていたところ(乙七〇)、それぞれ別に取得すれば同法で定める届出をする必要がなかったからである。

当初、小林を買受人として加藤八重子との間で売買契約が締結されたが、小林では決済資金の融資が得られる見込みがなかったことから、山田が同目録記載四の土地を原告に無断で他に販売する心配のないハッコー住宅を購入者として選んだものである(乙五三、五七)。

(5) 同目録記載五の土地については、買受交渉がうまくいかなかったが、本件甲土地の所有権取得から一年後ころ立ち退きが終了し、買受けができる状態になった。そこで、山田は、同じく国土法の届出を避けるために、ハッコー住宅が買い受けるように話をもっていき、ハッコー住宅が、平成元年八月八日、加賀俊雄、加賀一男及び鬼頭文恵との間で売買契約を締結し、所有権移転登記をした(乙三八の三、五七)。

(6) 本件甲土地の購入資金は、原告が地銀生保から、昭和六三年八月二五日、二億七五〇〇万円を借り入れて調達した(乙六五の一ないし一〇)。そして、本件甲土地に同日付けで、債務者を原告とする極度額五億三〇〇〇万円の根抵当権が設定されたが、平成元年一月三〇日付けで、同根抵当権の極度額が一二億二〇〇〇万円に変更された他、ハッコー住宅所有の同目録記載四の土地が担保物件として追加されている(乙三四ないし三七の各二)。

同目録記載四の土地の購入資金とするため、ハッコー住宅は、地銀生保の子会社であるシーエス総合サービス株式会社(以下「シーエス総合」という。)から、昭和六三年八月二五日、原告を連帯保証人として六五〇〇万円を借り入れた(乙六三の一なし六)。そして、同日、同目録記載四の土地にハッコー住宅を債務者とする極度額八〇〇〇万円の根抵当権が設定された(乙三七の二)。この貸付は、原告代表者山田がハッコー住宅の代表者中川信樹(以下「中川」という。)に対し、地銀生保を紹介し、地銀生保の原告との取引の担当者であった脇坂儀治(以下「脇坂」という。)が、地銀生保が貸し付けると国土法の届出が必要となるおそれがあると判断して、子会社であるシーエス総合を貸付先としたものであり(乙五七、七〇)、シーエス総合には地銀生保が同額を貸し付けている(乙六三の一)。

原告が二億七五〇〇万円を借り入れるについては、原告とハッコー住宅の間で、「1 甲(ハッコー住宅)と乙(原告)とは、甲が右記物件(物件目録記載四の土地)取得後速やかに、当該物件を買増すことを前提として、国土法の申請を行う。2 上記1にて申請した国土法申請の許可があり次第、乙は甲より右記物件を金六五〇〇万円也にて譲り受けるものとする。」との覚書が作成され、融資先の地銀生保に差し入れられた(乙六五の六)。また、この貸付の条件として、地銀生保は、最終転売先の買付証明を要求し、山内朗(以下「山内」という。)は、田代績司から大洋薬品工業株式会社(以下「大洋薬品」という。)の買付証明をとり、原告が地銀生保に提出した(乙四一、四二、四五、六五の二、七〇、証人山内朗)。

同目録記載五の土地の購入資金等に充てるために、ハッコー住宅は、原告に連帯保証人になってもらって、地銀生保から、平成元年八月八日、二億四五〇〇万円を借り入れた(乙六四の一ないし九)。そして、本件各土地にそれぞれ抵当権が共同担保として設定された(乙三四ないし三八の各二)。

(7) 本件各土地上には、借家が八軒あったが、八伸が平成元年八月ころまでには立ち退きをすませた。立ち退きに要した費用は、本件甲土地については原告が、本件乙土地についてはハッコー住宅が出した(証人中川信樹、原告代表者)。

(二) 売主の選定

(1) 八伸の田邊八郎は、本件各土地の更地化の目途が立った平成元年の夏前ころから、山田と相談して坪当たり一三〇〇万円程度で売却しようと、転売先をいろいろ当たっていたところ、名古屋市中区でホテルを経営する平野千代子から「坪一〇〇〇万円であれば買っても良い。」との意向が示され、田邊が山田に伝えたところ、山田は平野のいう条件で売却することを了承するので話を進めてほしいと依頼した。その後、平野千代子から、孫の平野恵三が経営しているマハラジャ岐阜を買主としたいとの話があり、山田もこれを了承した(証人田邊八郎)。

そして、同年八月一〇日ころには、平野恵三は、取引先の株式会社十六銀行柳ケ瀬支店に、一〇数億円の融資を申し込み、買受けのための資金づくりを始めた(乙五八)。

(2) 一方、山田は、平成元年夏ころ、当時衆議院議員であった近藤の後援会婦人部長であった田口から、近藤の知人である小出が事業で失敗して困っているからなんとかしてほしい旨の依頼を受けた。それは、近藤の命を受け、小出を転売の間に入れて利益を得させてくれという依頼であった。原告は、それ以前に、名古屋市代官町の土地を転売する際に、近藤を間に入れて利益を得させたことがあったことから、それと同様に、転売にコイデ・アンド・カンパニーを入れて利益を得させること、それによって、近藤にも利益が生じることになると考えた(証人田口)。

コイデ・アンド・カンパニーは、東京都港区六本木に本店の所在地を置き、建設資材や中国の汚泥処理のプラントなどを取り扱っていた貿易会社で、代表取締役は小出であった(乙一、六〇)。コイデ・アンド・カンパニーは、平成元年五月ころ手形の不渡りを発生させ、同月一一日に取引停止処分となり、事実上の倒産状態であった。なお、株式会社大和銀行も、同日に当座取引を解約し、以後取引をしていない(乙六六、六七)。

山田は、田口から紹介されて小出と出会った上、コイデ・アンド・カンパニーを間に挟んでマハラジャ岐阜に本件各土地を売却することとし、原告の不動産の売買の仲介をしてきた伊藤忠ハウジング名古屋支店流通営業部栄店の山内に対して、コイデ・アンド・カンパニーとの売買契約の仲介業務を行うように指示した。

山内は、九月上旬ころ、伊藤忠ハウジング流通営業二部渋谷店の鈴木に対して、港区六本木にあるコイデ・アンド・カンパニーが今度本件各土地を購入し、売却することになったので、共同仲介してほしい、特に売り側の方だけ担当してほしいと依頼した。鈴木は、コイデ・アンド・カンパニーからの買手が既に決まっているとも聞いたので、税金を軽減するためにコイデ・アンド・カンパニーを介在させたと認識した。もっとも、鈴木が売り先が、マハラジャ岐阜であることを知ったのは、マハラジャ岐阜への売買契約書が取り交わされた一〇月四日より少し前に、山内から契約の締結が行われることの連絡を受けたときである。

(三) 融資の申入れ

平成元年九月一三日、マハラジャ岐阜が本件売買に関して十六銀行からその購入代金の融資を受けるため、八伸は、十六銀行柳ケ瀬支店に、売主をコイデ・アンド・カンパニーと表示し、物件の説明、売買契約の内容の説明、及び購入代金のために必要な融資額等を記載した重要事項説明書(乙四九の二)、売買価額を坪当たり一〇〇〇万円として算定した平成元年九月一三日付け「諸費用概算」と題するメモ(乙四九の一)を送付した(乙五八)。

十六銀行は、資金量等の事情で、全額十六銀行で融資することが困難であったため、手付金一億六〇〇〇万円のみを融資し、残金の融資先として地銀生保名古屋支店を紹介した(乙五八)。

(四) 本件甲売買及び本件乙売買の契約締結

(1) 平成元年九月一四日、原告及びハッコー住宅を売主とし、コイデ・アンド・カンパニーを買主とする本件各土地の売買契約に関する国土法の届出が名古屋市長宛にされた。右届出において、売買予定価格とされた金額は、一平方メートルあたり四〇〇万円(坪あたり約一三〇〇万円)であった(乙四六の一)。

同月二〇日、右届出に対し、名古屋市長より、不勧告通知がされた(乙四六の二)。

(2) 同月二五日、地銀生保名古屋支店において(原告代表者、証人中川、山内(甲一)は山田宅というが(乙五五)、山内は、質問てん末書においては、地銀生保名古屋支店であると供述していること(乙四〇)、乙三九(手帳)、六二によれば、その日、伊藤忠ハウジングの鈴木は午後一時から三時まで東京の伊藤忠ハウジング青山店での店長会議に出席していたものであって、名古屋にいたことはないから、この契約締結には出席しておらず、鈴木が出席していたと供述する甲一、乙五五は信用できない。)、売主原告と買主コイデ・アンド・カンパニーとの間で本件甲売買の契約書(乙四)、売主ハッコー住宅と買主コイデ・アンド・カンパニーとの間で本件乙売買の契約書(乙六)がそれぞれ作成された。売買代金は、本件甲土地については四億九〇一四万円、本件乙土地については四億八二七六万円で、いずれも坪単価は約六〇〇万円であった。立会業者としては、いずれも、中央ホーム及び伊藤忠ハウジング名古屋支店の二社が記載されている。

(3) 同日、右各売買に対応する手付金として、コイデ・アンド・カンパニーから、大和銀行六本木支店を支払人とする先日付小切手で、原告に対し四九〇〇万円、ハッコー住宅に対し四八〇〇万円が支払われ、原告及びハッコー住宅名義のコイデ・アンド・カンパニー宛の領収証が作成された(乙五、七、四〇)。ただし、コイデ・アンド・カンパニーは、既に銀行取引停止処分を受けていたので、原告及びハッコー住宅に対し、後に現金に替えるので割引をしないように申し入れていた。

(五) 本件売買の契約締結

(1) 平成元年九月二六日、コイデ・アンド・カンパニーを売主とし、マハラジャ岐阜を買主とする本件各土地の売買契約に関する国土法の届出が名古屋市長にされ(乙四七の一)、同年一〇月二日、右届出に対し、名古屋市長より、不勧告通知がされた(乙四七の二)。

右届出において売買予定価格とされた金額は、前記(四)と同様、一平方メートルあたり四〇〇万円(坪あたり約一三〇〇万円)であった。

(2) 同年一〇月四日、十六銀行名古屋支店において、売主をコイデ・アンド・カンパニーとし、買主をマハラジャ岐阜とする、本件各土地を代金一六億二一五〇万円(坪単価一〇〇〇万円)で売却する旨の売買契約書が作成された(乙二。なお、売買代金額は、同月三一日、「確定測量に伴なう清算書(乙三)」により、一六億〇八七〇万円に減額された。)。右売買契約の契約書に立会業者として記載されているのは、伊藤忠ハウジング流通営業二部渋谷店及び八伸である。

(3) 出席者は、十六銀行の行員川上省藏、買主側が、マハラジャ岐阜代表者平野恵三、仲介業者である八伸の田邊八郎とその息子、売主側が、小出、伊藤忠ハウジングの山内と鈴木であった(乙五八、証人鈴木四郎)。

(4) そして、マハラジャ岐阜は、十六銀行柳ケ瀬支店から手付金相当額一億六〇〇〇万円の融資を受け、当日、同支店振出しの小切手を同銀行名古屋支店で現金化して取引の場に持参した(乙一七、五八)。

手付金一億六〇〇〇万円の現金は、平野から小出に渡され、その場で、山内が用意してきたボストンバッグに詰め替えられた。

(5) 契約を済ませた後、山田と鈴木と小出は、山内の運転する車で、右現金を山田の自宅に運んだ。そして、山内が現金の入ったボストンバッグを山田に手渡した(証人鈴木四郎)。その場で、原告及びハッコー住宅が小出に渡していた手付金の領収書に「現金に受領変更」との記載がなされた(乙五、七)。小出は、山田から、謝金として一〇〇〇万円か一五〇〇万円を現金で受け取り、そのうち、五〇〇万円を名古屋駅前の銀行から「ダイシン」という自動車販売店に振り込み、残りは債務の返済に使った(乙一)。

(六) コイデ・アンド・カンパニーに対する融資

(1) 平成元年一〇月五日、小出は、本件売買の残金の支払のための融資を受けようとして、株式会社ジージーエス(以下「ジージーエス」という。)名古屋支店の勝野敏博(以下「勝野」という。)に電話を掛けた。右電話は、小出がそれまで一面識もない勝野に初めてした電話であった(乙五〇、五九。乙五〇は、「電話連絡帳」と題する書類の一部であって、その右記載部分に続く別の電話に関する記載からも、信用できる。)。小出はまず、ジージーエスの東京本社の笹森英一(以下「笹森」という。)に融資の申込みをしたが、笹森は小出が不渡りを出したことを知っていたので、勝野を紹介したものである(乙六〇)。

勝野は、以前から融資取引で山田と関係があったところ、数日後、山田から、コイデ・アンド・カンパニーへの八億五〇〇〇万円の融資の依頼を受け、山田の自宅を訪問した。山田の自宅には、山田と山内と小出がおり、山田と山内から、融資資金が土地の取得資金であること、既に一六億円相当で土地を売却する先が決まっているとの説明を受けた。そして、後日、コイデ・アンド・カンパニーが原告及びハッコー住宅から本件各土地を購入したこと、コイデ・アンド・カンパニーがマハラジャ岐阜に本件各土地を売却した旨の各契約書が、山内から勝野にファックスで送られてきたこと、売却先が資産家で決済が不可能になることはないと思われたことから、ジージーエスは、コイデ・アンド・カンパニーへの融資を決定し、同月一四日に、小出に借入申込書をファックスで送付し、返送してもらった(乙五九)。

(2) もっとも、ジージーエスのコイデ・アンド・カンパニーへの融資金は、ジージーエスが地銀生保名古屋支店から借り入れるものであり、本件甲売買、本件乙売買の残金が決済された同月二三日に、地銀生保名古屋支店はジージーエス名古屋支店に対し、八億三〇〇〇万円を貸出期限を同年一一月八日と定めて貸し付けた(乙六九)。

(3) そして、同月二三日、ジージーエスは、コイデ・アンド・カンパニーに対し、本件甲売買及び本件乙売買の残代金支払資金として、八億五〇〇〇万円を融資し、ジージーエスは、本件各土地に極度額一〇億円の根抵当権を設定した(乙一五、三四ないし三八の各二)。

現実には、本件甲売買及び本件乙売買の代金支払がなされた地銀生保名古屋支店において、ジージーエスからコイデ・アンド・カンパニーに対し、手数料、利息及び印紙代計八二〇万八三一〇円を除いた八億四一七九万一六九〇円が交付されたが、その内訳は、山内と勝野が打ち合わせたもので、十六銀行名古屋駅前支店の保証小切手四枚(六五五万八四九〇円、六五〇〇万円、四億九〇〇〇万円、二億四五〇〇万円)と現金三五二三万三二〇〇円であった(乙一五、一六、五九)。

(七) 本件甲売買及び本件乙売買の代金支払

(1) 平成元年一〇月二三日、地銀生保名古屋支店において、原告、ハッコー住宅及びコイデ・アンド・カンパニーとの間で、本件甲売買の残代金(乙五)及び本件乙売買の残代金(乙七)の決済が行われ、所有権移転登記と抵当権の設定の手続もとられた。

(2) 出席者は、売主側が、山田と中川、買主側が小出、仲介業者が山内と鈴木、その他に地銀生保の脇坂、シージーエスの勝野であった(乙五九)。

(3) その場で、原告とハッコー住宅等に対して残金等の支払がされた。

六五〇〇万円の額面の保証小切手については、コイデ・アンド・カンパニーが裏書したものを原告が裏書し、四億九〇〇〇万円及び二億四五〇〇万円の額面の保証小切手については、コイデ・アンド・カンパニーが裏書したものをハッコー住宅が裏書し、前記(一)に述べた本件各土地取得の際に原告及びハッコー住宅が受けた地銀生保からの融資の返済に充てられた(乙七〇)。なお、六五〇〇万円については、本来ハッコー住宅が裏書し、四億九〇〇〇万円については、原告が裏書すべきところ、地銀生保の担当者脇坂、山田及び中川が誤って記載したものである。

また、額面六五五万八四九〇円の保証小切手は、同日、コイデ・アンド・カンパニーから、司法書士纐纈優に所有権移転登記、共同根抵当権設定手続等の費用六五五万八四九〇円の支払のために交付され、同司法書士には同日登録免許税等として別途三五万円が支払われた(乙一二)。

その他、伊藤忠ハウジング名古屋支店は、仲介手数料を一五〇〇万円受領し、領収書をコイデ・アンド・カンパニー宛作成した(乙一一)。

原告及びハッコー住宅は、平成元年分の固定資産税、都市計画税の合計各一九万二四九一円(乙九)を精算金としてコイデ・アンド・カンパニーから受領し、領収書を作成した(乙一一、四八)。

(八) 本件売買の代金決済

(1) 同月三一日、十六銀行名古屋駅前支店において、本件売買に関する残代金の決済が行われることになった。

(2) マハラジャ岐阜は、同日、地銀生保から、ホテル建設用地購入資金として前記残代金支払のため、一八億円の融資を受けた(甲九、一五、乙六八)。前記のとおり、マハラジャ岐阜は十六銀行に融資の申込みをしたが、資金量の関係で、十六銀行では融資できず、地銀生保を紹介されたものであるが、地銀生保は十六銀行と関係があり、本件売買の担当者飯沼克樹は前年に十六銀行から地銀生保に出向した者であり、本件売買代金残金の支払資金を地銀生保から借り入れてもらおうとして、山内を同道してマハラジャ岐阜の平野と会うなど積極的に活動して、地銀生保から融資できるようになったものであり、本件売買の契約書が取り交わされた時期には、ほとんど地銀生保で融資をすることが決まっていた(甲一〇、乙七〇)。なお、地銀生保で貸付けの稟議書が起案された一〇月一六日段階では融資額は一七億円であったが(甲九)。住友銀行名古屋駅前支店がマハラジャ岐阜に対し、地銀生保より利率を低額とすると申し出たため、これに対抗するべく、一億円融資額が増えて一八億円となったものである(乙六八)。

(3) 同月三一日、十六銀行名古屋駅前支店において、マハラジャ岐阜は本件売買に関する残代金一四億四八七〇万円を、現金五億九八七〇万円、保証小切手八億五〇〇〇万円(額面八億三〇〇〇万円と二〇〇〇万円の小切手)でコイデ・アンド・カンパニーに支払い、土地の所有権移転登記を受けた(乙三四ないし三八の各二、五九)。

(4) 出席者は、十六銀行の川上、買主側が、マハラジャ岐阜代表者平野、仲介業者である八伸の田邊八郎とその息子、ジージーエスの勝野、司法書士、売主側が、小出、伊藤忠ハウジングの山内と鈴木であった(乙五九、証人鈴木四郎)。

(5) 右計八億五〇〇〇万円の小切手二通は、同日、ジージーエスに手渡され、ジージーエスから地銀生保に対し、前記(六)の融資の返済に充てられた(乙一七)。

(6) 残りの現金は、地銀生保が用意したジュラルミンのケースから出して、二、三本のヴィトンのバッグに納められた。それを、小出、鈴木と山内が山内の車でキャッスルプラザに運んだ。別行動で、田邊八郎親子と勝野もキャッスルプラザに向かった(証人鈴木四郎)。

(7) コイデ・アンド・カンパニーは、同日、印紙代六〇万円を支払うとともに(乙八)、纐纈優司法書士に根抵当権抹消登記手続費用等四万八九六〇円(ただし、八〇二〇円の返却を受けた。)、土地家屋調査士に六万五〇〇〇円を支払った(乙一三、一四)。また、コイデ・アンド・カンパニーは、マハラジャ岐阜から、固定資産税・都市計画税精算金として一二万八八六三円の支払を受けた(乙一七)。

(九) その後の状況

(1) キャッスルプラザの会議室には、山田と中川がいた。そこで、同人らと小出、八伸の田邊親子、伊藤忠ハウジング渋谷店の鈴木が昼食会を開催した。なお、山内は、次の契約があったため、ホテルの前に来たが、会議室には入らなかった。

(2) その場で、山田が、バッグを開けて、現金を紙袋に移し替え、仲介手数料を支払った。山田は、大きな声で「伊藤忠さん二五〇〇万」「八伸さん七〇〇〇万」と言って、伊藤忠ハウジングに対し二五〇〇万円、次に八伸に対し、二三〇〇万円を支払った(証人鈴木四郎)。これに対し、山内は、仲介手数料は十六銀行で行われたというが(甲一)、信用できない。また、領収書は、コイデ・アンド・カンパニーに対し、伊藤忠ハウジングが二五〇〇万円、八伸が二三〇〇万円である(乙一〇)。

山田が、「八伸さん七〇〇〇万」と言ったのは、八伸が、買主側の仲介業者としてマハラジャ岐阜から支払われた仲介手数料と右二三〇〇万円を加えて七〇〇〇万円近くを取得したことを言ったものである(乙六二、証人山内朗、同鈴木四郎)。

(3) キャッスルプラザでの昼食会が終わると、小出は山田と共に山田の自宅へ行った。そこには、近藤と田口が来ていた。

その場で、謝金の分配が行われ、小出は山田から二四〇〇万円か二九〇〇万円を現金で受領した。当初から四〇〇〇万円と決まっており、一〇月四日の段階で受領した一〇〇〇万円か一五〇〇万円を控除した額から一〇〇万円を諸費用として引かれたものである。

小出は、その場で、田口に対し、謝金として四〇〇〇万円の一割である四〇〇万円を渡した(乙一)。

(4) 山内は、山田からの指示で、原告が本件各土地を地上げするために必要な資金の融資を金融機関から受ける際に必要となる買付証明書を発行してもらう等などの便宜を図ってもらった大洋薬品の関連会社であるフジセールス及び同様に便宜を図ってもらったとされる航洋産業に対し、それぞれ五〇〇万円ずつの金員を支払った(証人山内朗)。

フジセールスの業務等の担当者である梅村英夫(大洋薬品の財務部長)は、九月二五日の本件甲売買と本件乙売買に立ち会っていないのに、各契約書のコピーの立会業者欄に、フジセールスの記名押印を行い、仲介業を行ったかのようにみせかけ、一〇月二三日には、コイデ・アンド・カンパニーに対する仲介手数料五〇〇万円の領収書(乙一一)を作成し、山内から五〇〇万円を受領した(乙四四)。

航洋産業は、山内から依頼されて、大洋薬品から買付証明書を取り付けたが、マハラジャ岐阜が買ってしまったので、平成元年一〇月二三日、本件売買の仲介をしたことにして、山内から五〇〇万円を受領した(乙四五)。ただし、領収証は、コイデ・アンド・カンパニー名義とした(乙四八)。

2  以上の事実を総合すると、本件一連の行為は、本件各土地の実質的な所有者であった原告がマハラジャ岐阜に坪単価一〇〇〇万円で売却したものであり、コイデ・アンド・カンパニーは、形式的に転売者として加わったにすぎないものと認められる。右認定を基礎付ける事実を挙げると次のとおりである。

(一) 本件乙土地の処分について、原告が実質的に決定権を有していた。

本件乙土地について、ハッコー住宅が所有者となったのは、国土法の届出を避けるためであり、原告に無断で本件乙土地を他に処分しない者としてハッコー住宅が選ばれたこと、ハッコー住宅の土地取得資金と立退料支払資金は、原告が紹介した地銀生保によって融資されており、原告がハッコー住宅の借入債務を保証していること、コイデ・アンド・カンパニーとの売買交渉は原告の関係者がすべて行っており、ハッコー住宅は処分先や処分代金を定めるについて関与していないことなどから認められる。

(二) 買主がマハラジャ岐阜であること、代金が坪単価一〇〇〇万円であることは、平成元年九月一三日ころには決まっていた。

右事実は、マハラジャ岐阜が同年八月一〇日ころから十六銀行に融資の依頼をしており、以後順調に成約に至ったこと、鈴木が、九月上旬ころ、山内から仲介の依頼を受けた際、買主が決まっていると聞いていたこと、八伸が、九月一三日に、十六銀行柳ケ瀬支店に重要事項説明書及び諸費用概算と題するメモを送っていることから、明らかである。

原告は、重要事項説明書と諸費用概算と題するメモは、平成元年一〇月四日以降に十六銀行に提出されたものであると主張するが、川上省藏が同年九月一三日ころに送られてきたと供述していること(乙五八)、諸費用概算と題するメモの日付が平成元年九月一三日であること、コイデ・アンド・カンパニーが同社を買主とする国土法の届出を同年九月一四日に提出したことが認められ、これらの事実によれば、九月一三日に提出されたものと認められる。

原告は、鈴木証言の信用性について否定的な主張をするが、鈴木証言は、本件事件当時、原告及びその関係者とは何ら無関係な不動産会社の単なる一社員であること、証言内容も、合理的で一貫していること、国税局の査察段階とその供述内容が変遷しているが、その変遷理由について、自ら査察段階においては虚偽の供述をしていたことを法廷で認めたうえ、その虚偽供述をした理由についても、当時は伊藤忠ハウジングの会社員であって自分の立場を守りたいという動機があったこと、自らにいわば棚からぼた餅の営業成績をくれた山内に、コイデ・アンド・カンパニーがあくまで鈴木証人の所属する伊藤忠ハウジング流通営業二部渋谷店の本来の客であるように、国税局担当者に証言するように口止めをされたことという合理的で納得できる理由を述べており、信用できる。

原告は、十六銀行柳ケ瀬支店がマハラジャ岐阜からの本件各土地取得資金に係る融資の要請を断ったため、マハラジャ岐阜は平成元年一〇月に地銀生保名古屋支店に融資を申し込んだ旨主張する。しかし、マハラジャ岐阜は十六銀行柳ケ瀬支店から地銀生保名古屋支店で融資を受けるよう紹介されたにすぎず、マハラジャ岐阜が本件各土地を取得するための資金手当が平成元年一〇月末までできなかったのではない。前記認定のとおり十六銀行柳ケ瀬支店は実際に手付金一億六五〇〇万円を融資しているのであり、その残金についても、十六銀行柳ケ瀬支店自身が自己の資金量等の事情から直接融資するのではなく、地銀生保名古屋支店に紹介して、地銀生保から融資することとしたことによるものである。

地銀生保名古屋支店が本件各土地売買に係る融資に積極的であった事実は、コイデ・アンド・カンパニー、ジージーエスに対する地銀生保名古屋支店の融資の事実を見れば明らかである。

また、原告は、当庁平成八年(ワ)第六二九号事件及び平成九年(ワ)第三一三〇号事件において、地銀生保がマハラジャ岐阜に一八億円を融資した際に、平野千代子が連帯保証をしていないと争ったことから、地銀生保からマハラジャ岐阜に対する融資が難航していたと主張するが、同事件は、本件融資の数年後に訴え提起されていること、右各訴訟において、連帯保証が成立することが認められていることからして、原告の主張は採用できない(乙七二ないし七四)。

(三) コイデ・アンド・カンパニーが本件甲売買、本件乙売買の買主であること、本件売買の売主であることは不自然である。

(1) コイデ・アンド・カンパニーは、不動産取引業者ではないし、名古屋での地盤がないのに、短期間に転売している。

(2) 本件各土地を取得するための資金繰りについては、原告らによって段取りがされており、コイデ・アンド・カンパニーが果たした役割はほとんどない。コイデ・アンド・カンパニーが本件各土地を購入するためのジージーエス名古屋支店からの融資の取付けについて、売買日の平成元年九月二五日まで全く行われていないばかりか、融資の交渉もまったくなされておらず、かえって、本件売買の契約成立後の同年一〇月五日に初めて融資の交渉が行われている。

(3) コイデ・アンド・カンパニーは、本件各土地の売却先及び売却金額の決定に全く関与していない。

(4) コイデ・アンド・カンパニーは不渡手形を出して銀行取引停止処分を受け、本件売買当時、事実上倒産していた。原告及びハッコー住宅はこれを知りながら、合計約一億円の手付金の支払として、決済される可能性のないコイデ・アンド・カンパニーの先日付小切手の交付を受けた。原告は、山田らがこの事実を知らなかった旨主張するが、山田は、田口から、小出が事業で失敗して困っているからなんとかしてほしい旨の依頼を受けたのであり、これらの事情を知らなかったものとは認められない。

(5) コイデ・アンド・カンパニーのための仲介業務を何ら行っていない八伸が、コイデ・アンド・カンパニーから仲介手数料をもらっている。

(四) 以上の他、本件売買は、次のような点で不自然である。

(1) 本件売買の決済は高額であるにもかかわらず、現金で行われている。

(2) 原告は、本件各土地を坪一〇〇〇万円で、資力に問題がなく、融資先も決まっていたマハラジャ岐阜に対し売却できたのに、敢えて坪六〇〇万円でコイデ・アンド・カンパニーに売却した、このような経済的観点からみて不自然な行動を、近藤から紹介を受けたということだけでは説明できない。

(五) 本件売買の手付金と残代金が山田に渡されている。

そして、山田から仲介業者に仲介手数料が支払われている。また、フジセールス、航洋産業への支払は、原告が山内を介して行ったもので、コイデ・アンド・カンパニーが売主では説明ができない。

小出は、本件売買により、四〇〇〇万円の利益しか受けていない。右事実は乙一の平成三年三月二七日付けの小出の質問てん末書により認められるものであるが、同人は、所在不明のため、当法廷で反対尋問を受けていないので、その内容の信用性が問題となる。しかし、コイデ・アンド・カンパニーがダミーにすぎないことは、他の証拠から認定できる事実と符合するものであるし、少なくとも、受領した金銭については、詳細な説明であるとともに、四〇〇万円を田口に渡した点も同証人の証言と一致しており、信用できる。

3  以上に対し、原告は、同年一〇月三一日のコイデ・アンド・カンパニーとマハラジャ岐阜の残金決済の場に立ち会っていないこと、原告も本件各土地の購入資金を他から借りており、早く本件各土地を売却せねばならない事情もあり、有力な政治家の紹介でもあり、紹介者の近藤及びコイデ・アンド・カンパニーに相当な利益が出るとしても、原告及びハッコー住宅も、コイデ・アンド・カンパニーに売却することにより十分な利益を得ることになるものであること、当時は、いわゆる土地ブームの最中であり、契約が成立して残金決済の日までに転々と何人も先に転売される事例が多数存在したこと、原告は、本件甲土地につき、本件甲売買があったとして法人税申告をしたこと、ハッコー住宅も本件乙土地につき本件乙売買があったとして法人税申告をしていること、本件乙土地をハッコー住宅が原告に売買した事実を証する証拠は一切存在しないこと等から、原告は本件売買の実質的な売主ではないと主張し、山内証言及び原告代表者供述には、右主張に沿う部分もある。

しかし、前記認定の各事実に照らし、山内証言及び原告代表者供述は措信できず、右主張は採用できない。

4  以上によれば、本件売買の実質的な売主は原告であり、本件売買における代金は原告に帰属するものと認められる。

二  本件更正処分の適法性について

1  所得金額

原告の本件事業年度における所得金額のうち、確定申告した所得金額九九八三万四八五九円に、別表二の番号2ないし5の金額を加算し、番号7を減算すべきことは、当事者間に争いがなく、以下のとおり、別表二の番号1の金額を加算し、番号6を減算すべきであり、所得金額は金七億六九七六万二九六四円である。

(一) 別表二番号1(売上げの除外金額) 一一億一八五六万〇〇〇〇円

前記一で認定したように、原告は、平成元年一〇月三一日、マハラジャ岐阜に対し、本件各土地を一六億〇八七〇万円で譲渡したが、その確定申告において、右土地の譲渡金額の一部であるにすぎない金額四億九〇一四万円(本件甲土地譲渡分、乙四、五)のみを売上げに計上し、差額一一億一八五六万円を除外した。

右売上除外金額一一億一八五六万円は、原告の益金の額に算入されるものである。

(二) 別表二番号6(売上原価等の認容額) 五億六一八〇万六四〇一円

本件各土地の売上げに係る売上原価及びその他の費用で、原告の確定申告において損金の額に算入されていなかったものの合計額は、次のとおりであると認められる。

(1) 本件乙土地の原価 四億八二七六万〇〇〇〇円

前記一で認定したおり、原告は、コイデ・アンド・カンパニーを利用して本件乙土地を簿外で取得し、マハラジャ岐阜に譲渡したものであるから、本件乙土地を取得するため、平成元年一〇月二三日にコイデ・アンド・カンパニーの名義でハッコー住宅に支払った本件乙土地の取得代金は、原告の本件乙土地売却に係る売上原価と認められる。

(2) 租税公課の認容額 七九万二四九一円

右金額は、原告がコイデ・アンド・カンパニーを利用して本件各土地の取引の際の売買契約書などに貼付した収入印紙代六〇万円(乙八)及びコイデ・アンド・カンパニーの名義でハッコー住宅に支払った固定資産税及び都市計画税の精算金金額一九万二四九一円(乙九)の合計金額である。

(3) 支払手数料の認容額 六三〇〇万〇〇〇〇円

右金額は、原告が本件各土地をマハラジャ岐阜に譲渡する際に、コイデ・アンド・カンパニーの名義で平成元年一〇月三一日に伊藤忠ハウジングに支払った手数料の金額二五〇〇万円、田邊八郎に支払った手数料の金額二三〇〇万円(乙一〇)及び平成元年一〇月二三日に伊藤忠ハウジングに支払った手数料の金額一五〇〇万円(乙一一)の合計金額である。

なお、原告が、山内を通じてフジセールス及び航洋産業に支払った各五〇〇万円については、証拠(乙四四、四五)によれば、同会社らは本件売買の仲介を行っていないものと認められるから、仲介手数料と解することはできず、謝金というべき性質の支払であるから、支払手数料に該当しない。

(4) 雑費の認容額 七〇四万五六〇〇円

右金額は、原告が本件各土地の売買の際に、コイデ・アンド・カンパニーの名義で本件各土地の登記等の費用として平成元年一〇月二三日及び同年一〇月二二日に纐纈優司法書士に支払った金額六九八万〇六〇〇円(乙一二、一三、源泉徴収に係る税額を含む。)及び越境確認測量費用として同年一〇月三一日に伊藤直樹土地家屋調査士から請求を受けた金額六万五〇〇〇円(乙一四)の合計金額である。

(5) 支払利息割引料等の認容額 八二〇万八三一〇円

右金額は、本件各土地の取引に関して、原告がコイデ・アンド・カンパニーを利用しその名義でジージーエス名古屋支店から借り入れた金銭に対して支払った利息、印紙及び手数料の合計金額である(乙一五、一六)。

2  超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額

(一) 別表三のうち、番号11、12を除く課税土地譲渡利益金額が同表記載の金額であるべきことは、前記第二の二の3で述べたとおりである。

(二) 原告は、本件各土地についてその一部のみを譲渡したとして租税特別措置法六三条の二の課税の特例の計算をしているが、前記一のとおり、原告は、平成元年一〇月三一日、本件各土地をマハラジャ岐阜に対し一六億八七〇万円(八億一〇四五万七〇八八円と七億九八二四万二九一二円の合計額)で譲渡したものである。右土地の譲渡による収益に対応する原価の額は、原告の確定申告に係る原価の額三億三〇一一万二八〇〇円のほか、平成元年一〇月二三日にコイデ・アンド・カンパニーの名義でハッコー住宅に支払った金額四億八二七六万円である。なお、別表三では、本件各土地の超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額の計算について、原告が昭和六三年に取得したものと、平成元年にハッコー住宅から取得したものとを分けて計算した。その際の譲渡金額は、譲渡による収益金額一六億八七〇万円をそれぞれ取得した土地の面積の割合をもって按分した金額によった。

(三) 以上の認定に基づき計算すると、課税土地譲渡利益金額は八億一二二六万一〇五四円、これに対する土地譲渡に係る税額は、右金額(ただし、国税通則法一一八条により一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた金額である。)に一〇〇分の三〇の税率を乗じた金額二億四三六七万八三〇〇円となる。したがって、超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額は、原告が確定申告書に記載した金額六五〇〇万二五〇〇円より一億七八六七万五八〇〇円増加することとなる。

3  以上、述べたところから、原告の所得金額は、七億六九七六万二九六四円、超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額は、二億四三六七万八三〇〇円となり、これに基づいて原告の差引合計法人税額を計算すると、五億四六二四万七六〇〇円となり、本件更正処分はその範囲内であるから適法である。

三  本件重加算税決定の適法性

前記認定のように、原告は、本件各土地を自らマハラジャ岐阜に譲渡したにもかかわらず、その一部しか計上せず、あたかもコイデ・アンド・カンパニーが売買の当時者であるかのように仮装して売上げを除外して申告したことが認められる。

また、原告は、名古屋市東区葵二丁目三〇五番地の土地の仕入金額のうち手付金一億二〇〇〇万円を二重に計上して確定申告したこと、原告は、息子が代表者を務めるキャプテン観光がシンコーホームに対して負担することとなつた三三〇〇万円(乙二四)を、これに代わって支払ったが、取引自体が全く行われていない名古屋市中村区太閤通三丁目二八番一一の土地についてシンコーホームと売買契約を締結したとして契約書(乙二三)を作成し、右契約を解除したため契約の際に支払った手付金三三〇〇万円を放棄する合意書(乙二二)を作成し、これに基づいて確定申告したことは当事者間に争いがない。

以上の各行為は、単なる帳簿上の誤りではなく、原告による作為が認められるのであって、国税通則法六八条二項にいう「国税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の全部及び一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺいし、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」に該当する。

したがって、右に述べたとおり、原告の差引合計法人税額は、五億四六二四万七六〇〇円となり、原告の申告に係る同税額九九六〇万六〇〇円との差額四億四六六四万七〇〇〇円は、すべて右重加算税を賦課すべき場合に該当する。右差額について、これに係る重加算税の額を計算すると、増加した税額四億四六六四万七〇〇〇円の一万円未満の端数を切り捨てた金額(国税通則法一一八条三項)に四〇パーセントを乗じて計算した一億七八六五万六〇〇〇円となる。

したがって、被告が行った本件重加算税決定は、右金額の範囲内でなされており適法である。

四  結論

以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野田武明 裁判官 佐藤哲治 裁判官 達野ゆき)

別表一

<省略>

別表二

所得金額 769,762,964

<省略>

別表三 超短期所有土地等の譲渡等に係る譲渡利益金額に対する税額の計算に関する明細表

<省略>

<省略>

物件目録

一 名古屋市中村区名駅三丁目六一〇番一

宅地 九〇・〇二平方メートル

二 同所同番二

宅地 九〇・〇二平方メートル

三 同所同番三

宅地 九〇・〇二平方メートル

四 同所同番四

宅地 九〇・〇二平方メートル

五 同所六〇二番一

宅地 一七五・九七平方メートル

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例